「妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント資格に興味があるけど、受講後どのように知識を生かせるのかイメージできない…」
そんな方のために、リアルな生徒さんの声を届けるための卒業生インタビュー企画。全9回でお届けします!(一覧はこちら)
第2回の今回は受講・資格取得をきっかけに、「ねんね外来」を設けた自身のクリニックを開業された、小児科医の坂井みのり先生にお話を伺いました!
ーまずは簡単に、自己紹介をお願いします。
【坂井先生】神奈川県に住んでいる小児科医、坂井みのりです。幼稚園生の娘がひとりいます。これまではずっと新生児科・NICUで働いていて、2022年11月に小児科のクリニックを開き、今はクリニック1本でやっています。
ーHPを拝見したのですが、「ねんね外来」を設置されていて、自分の子どもが0歳で育児のことが全然わからなかった時に欲しかった、相談しやすそうな雰囲気がいいですね。
【坂井先生】そうなんですよ。コンセプトとしては、「病気じゃない人でも気軽にかかりやすいクリニック」で、病気を治す以外にも子どもと主にお母さんが笑顔になるというのがテーマなので、割と子育て相談などの割合が他のクリニックよりも多いかもしれないですね。
ーかかりつけの先生のところへは病気になってから、病気だから行くということが多く、母乳やねんねについて相談しに行くみたいなのは、忙しくて無理なのかなって思っていたところがあったので、いいなぁと思いました。
【坂井先生】そうですよね。地域の支援センターとか遊び場とか、コロナでそれすらもなかった時期がしばらくあったものの、一般的には困ったらそういうところで保健師やボランティアの子育ての先輩みたいな人に相談することが多いですよね。もちろんそれで解決できることもあると思いますが、あんまり医学的根拠に基づいていなかったり、経験談が多かったり、根性論だったりして。ねんねのことも特にそうですが、子育て界隈だとそういうのがどうしても多いですよね。
小児科で相談すると、ある程度時代の流れ(最新の情報)と、理論と根拠があることをお伝えできるし、聞いた方も情報が一本化されている方が納得できるというか。色んなところで色んな人に聞くと、色んな経験談を聞いてよくわからなくなっちゃう、みたいなこともあると思うので。そのあたりが、小児科クリニックで相談してもらえると混乱を防げて、正しい知識を提供できるのではないかと。そういうところが強みかなと思っています。
ーどのようにIPHIの妊婦と乳幼児睡眠コンサルタント資格取得コースのことを知りましたか?また、受講の決め手は何でしたか?
【坂井先生】NICUで働いていると、退院していった赤ちゃんの日頃の成長や発達を外来でフォローすることが多いのですが、やっぱり一定数ねんねトラブルや夜泣きの相談がありました。でも日本の小児科医学の勉強の中にはねんねの分野は入っていなくて、当時まだ子育てもしておらず、あまりきちんと相談に乗れなかったので、機会を作ってねんねの勉強をしたいなと思っていました。そんな時、元々繋がりがあった(同じく資格取得者の白井)さよこ先生がIPHIで資格を取得したことを知り、さよこ先生から(資格取得コースの講師の愛波)あやさんのことを知りました。それで面白そうだし、ためになりそうだしと思い、受講を決めました。
ー赤ちゃんのねんねについて勉強する選択肢はIPHI以外にもあったんですか?
【坂井先生】睡眠とは?というレベルだともちろん医学的にあるんですが、赤ちゃんの夜泣きの原因や改善方法を全然知らない時期だったので、(IPHIは)科学的根拠があるというところにすごく惹かれたのは確かです。睡眠学会はあるんですが、成人の無呼吸や不眠症などがメインで、赤ちゃんの睡眠に特化して勉強できる場はそもそもあまり見当たらなかったですね。なので、まずはIPHIで勉強してそれを診療に生かしたいなと。あとはお母さんにアドバイスをしたいと思った時に、自分の中に軸になる知識とか経験がないとお話しづらいので。
ー医学生時代に赤ちゃんのねんねを学んだことは?
【坂井先生】全然。ほとんどないです。やっぱり病気ではないから。病気は勉強するし、赤ちゃんの発達とか成長は勉強するので、夜泣きが起きる時期とかはなんとなくわかるんです。でもそれは自然現象のひとつみたいな感じなんですよ。病気じゃないから。お母さんは困るし、本人にとってもいいことないんだけど、そういう時期としてありますという知識は与えられる。でも、それを改善していこうという立場の勉強はなくて。白血病の勉強とか心臓の勉強とかはいっぱいありますけど、日頃のトラブルへの対応とかは全然ないんですよね。日本だけなのかもしれないですけど。
ーちなみに自身のお子さんのねんねはどうでしたか?
【坂井先生】うちは多分、全然楽な方だったと思います、今思えば。色んな人の話を聞けば聞くほど、「いやぁ、みんな超大変だなぁ」って。うちは生後6ヶ月くらいの時にはもう夜通し寝てたかなぁ。せいぜい3時ごろふっと起きて、ちょっとトントンするくらいで。抱っこじゃないと寝ないとか、そもそもミルクだったから添い乳とかもなかったし、ベビーベッドだったし、運良くねんねにとっていい環境を選択していたんだと思います。当時は「困ってます」っていう体ではいましたけど、みんなの話を聞いていると「言っちゃいけないな・・・」っていうレベルでしたね 笑
ー資格取得コースの受講生はやっぱり悩んでた・悩んでるママさんが多いですものね。
【坂井先生】そうそう。同期やクライアントさんの話を聞いても「それはみんな、困ってるよね・・・」みたいな感じで。
ークリニックの「ねんね外来」にはねんねの悩みで疲弊してしまって、心配だなっていうお母さんも結構来られますか?
【坂井先生】うん、いますね。あとはやっぱり、聞くと困ってるっていう。本当に困っている人たちももちろん一定数いて、そういう人たちは色んな所で相談したりしているのかもしれないですけど、「これは困りごととしてカウントするものではない」というような、無意識の我慢をしている方が多くて。健診とか何かのタイミングで聞くと実は困っているということはよくありますね。
ー資格取得コースを受講してよかったことは何ですか?
【坂井先生】あやさんと知り合えたことというか、あやさんの生き方とか仕事の仕方とか、全体的にすごく刺激になるし、やっぱり医者の世界って狭いので、同じ医者の友だちや高校までの友だちが多い中で、バリバリ仕事をしているあやさんは私の中では新しいモデルケースで。そこが一番大きいです。何かあった時相談しようと思えるし、頑張っているあやさんのために何かできることないかな?と思ったり。
あとはやっぱり同期がよかった。結構多くて20人くらいいたんですけど、(同じく小児科医で資格取得者の浦辺)ともみ先生の存在は大きかったですね。それ以外の同期の人たちとも今でも繋がっていて、みんなそれぞれ頑張っています。大人になってから社会が広がるってなかなかないので、人脈や視野も広がったのがとても大きいですね。それぞれみんな特技や強みがあり、お互いを認め合う関係性がすごくよかったです。楽しかった。
ー先生の受講していた2021年から現在まで、プロセスはそんなに変わっていないんでしょうか?1部を受けて、2部を受けてという。
【坂井先生】そうだと思います。でも私が取り終わったくらいから、1部のカリキュラムを見直そうっていう話になって、ともみ先生やさよこ先生などの小児科医何名かであやさんたちが作った資料をブラッシュアップして、裏付けの論文を全部調べたりしたんですよ。それもすごく勉強になりました。
ー資格取得で苦労したことはありましたか?
【坂井先生】普通に仕事をしながら取得したので時間がなく、仕事の合間に医局の隅でボランティアクライアント(現モニタークライアント)さんとZoomしたりとか、ボランティアクライアントさん(のコンサルテーション課題をこなすの)はなかなか大変でした。でもそれをしないと経験にならないので大事なステップで、ともみ先生とあやさんに散々お尻をたたかれて取得したって感じですね。みなさんのおかげで取れたっていう 笑
ー2部の講義はお仕事の後に?
【坂井先生】そうですね。講義が夜の時は参加できたので、半分くらいは参加できたかな。昼間はちょっと難しかったので、録画視聴でした。
ー資格取得の目的は達成できましたか?
【坂井先生】そうですね、できたと思います。クライアントさんのねんね相談というのはやっていないですが、ねんね外来という形でひとりひとりの悩みに答えたり、クリニックをベースに情報提供や呼びかけをすることで啓蒙活動をして、みんながどれくらい困ってるかなど数を通して把握し、社会に還元したりしたいと思っています。こういうアイデアもあやさんと知り合って、講義を受ける中でインスピレーションとして湧いたものです。
ー「ねんね外来」についてもう少し詳しく教えてください。
【坂井先生】元々は普通の外来でママたちの相談に答えられたらいいなと思い資格取得をしたんですど、ねんねの悩みは我慢せず、1日でも早く相談すべきことであるという認識を広めるためにも「ねんね外来」と名付けて外来を始めました。今は同じIPHIのコンサルタントが週1回クリニックへ来て、個別の案件のコンサルテーションを実施したり、講座を開いたりしています。
「ねんね外来」の流れは、個別のコンサルテーションへ進む前に身体的に眠れない理由がないか、発達の特性や特筆すべきことがないかなどを小児科の診察として行います。特に該当することがなく、例えば入眠の癖をとっていけばうまく眠れるようになるのではないかと思われるお子さんは、コンサルテーションに進んでいただいています。改善期間中ずっと伴走するスタイルではないのですが、1~2回来院していただき、スケジュールの提案などのアドバイスしていく、ねんねの外来とコンサルを一体化させたスタイルになっています。とても需要もあるので増やしていけたらいいなと思っています。
ー乳幼児睡眠コンサルタント資格を取得しただけでは医療面は全然補えないので、とてもいいですね。
【坂井先生】やっぱり画面上ではわからない、診きれないところっていうのがありますね。対面で診察できるとそういったモヤモヤが解消できるので、そこはクリニックならではの強みかなと思っています。
ー対面だと安心感もありますし、説得力もありますよね。ひとつ気になったことで、クリニックでねんねコンサルを受けると保険は適用されるんですか?
【坂井先生】コンサルは自費でやっていますが、最初の診察は保険診療内でやっています。何を解決したいかの聞き込みをした上で、現在の発達状況や生活環境などに応じて、改善に向けて簡単に出来ることもお伝えします。2回目、3回目はコンサル料をいただいて自費でやっていますが、困っている人は割とコンサルを受けてくれますね。
ー答えられる範囲で結構なのですが、1ヶ月でどのくらいの人がコンサルを受けるのですか?
【坂井先生】2023年3月までは月2回の午後3時間の枠しかなかったんですが、全部埋まってしまって。月2回だと一度逃すと次が1か月後になってしまうこともありますが、ねんねの悩みは待ったなしなのでコンサルタントとも相談し、4月から週1になったところです。予約の数もそれに比例して増えるかなと。コンサルを受ける方は、もちろんクリニックの診察を経て、こちらから勧められてというパターンもあるのですが、半分以上はネットとかで調べて、自分で予約を入れる方が多いです。
ー「ねんね外来」を設置しているところってないですよね?
【坂井先生】ない、全然ないですね。何ヶ所か、総合病院単位で「夜泣き外来」とかをやっているところはあるけど、クリニック単位だと国内だと片手に収まる程度しかないです。そしてIPHIのメソッドを導入しているところは1つもないです。クリニックの「ねんね外来」はあやさんに紹介していただいた「夜泣き外来」を設置しているクリニックの先生のお話を聞いたりしながら組み立てた感じです。まだ試行錯誤している最中ですが。
ー講座はクリニックで?どんな感じでやられているんですか?
【坂井先生】ちょうど先日、あやさんを講師に迎えて初めての講座を開きました。ねんねの基本知識・ポイントをいくつか伝えるスタイルで、好評でした。コロナも収束してきているので、そろそろこういうのを増やしていければと思います。クリニックの近くに日替わりで色んな子育て講座が開催されている親子カフェあるので、今回はそこでやりました。
ー個人的には両親学級とかでプレママに広めていきたいなと思っています。
【坂井先生】そうですよね。まさにクリニックのコンサルタントとも話していて。出産後の入院中の空き時間にねんねの話が耳に入ったり、動画とか作れたらいいね、という話をしているんです。
ー最後に、これからの受講を検討されている方や、現在受講中の方にメッセージをお願いします。
【坂井先生】あやさんもよくインスタなどで言っていますが、ねんねの知識以外にもいろんなことを知れるので、IPHIを受講すると得なことばかりだと思う、ということを伝えたいですね。是非皆さん、大変だけど頑張ってください!お金もちょっと大変、結構勇気がいる金額ですからね。ただ、それだけみんな本気だということです。
小児科医としてのお立場を存分に生かしながら、ねんねの知識はもちろん、「もっと気軽に相談していいんだよ」というカルチャーを広めることに尽力されている坂井先生のインタビューをお送りしました!
次回もお楽しみに♪
【坂井みのり先生プロフィール】
東京女子医科大学医学部卒業。慶應義塾大学小児科学教室に入局後、慶應義塾大学病院のほか、神奈川県、群馬県の関連病院に勤務し、2022年11月から「0歳からのこどもクリニック」院長。 資格:小児科専門医、周産期専門医(新生児)、IBCLC(国際ラクテーションコンサルタント)